北方版「水滸伝」感想


北方謙三先生の「水滸伝」(北水)の感想を綴ったページです。


【北方水滸伝との出会い】

 2013年7月、長編「Fates」の06章(記念式典のお話)が書き終わり、07章の本文書きに手をつけ始めた私は、ひとつの悩みにぶつかりました。

「戦争シーンが書けねえ…!」と。

 07章から本格的にグラスランドとゼクセンの戦が始まるため、作ったプロットの中にも戦争シーンは組み込んでありました。私は文章を書くとき、プロットは端的なストーリーの流れだけを書き、本文でそれを培養していく、という方法をとっています。で、これが戦争シーンになるとプロットでは「ゼクセン優勢、●●が善戦し、△△が怪我をして、××が戦死」という具合になるんですが、ここから本文を書き上げていくのがまあ難しい。自分で書いたプロットに「そんな簡単に善戦するだの怪我するだの書いてるけどさあ」と愚痴をこぼすことも多々あります。
「どんな戦い方をして優勢になったのか、どんな風に善戦したのか」。そこまでを書かないと、読み物としては成り立たない。だけど、それを書くには圧倒的に知識も語彙もない。実を言うとさほど読書家でもないので(自分で書くかゲームする方が好き)、あまり参考になりそうな小説も手元にない。
 ということで、2013年の夏頃から資料探しの気持ちで戦争シーンのある小説を読み漁るようになりました。
 最初は幻水と似た世界観のファンタジー系ラノベに手を出しましたが、しっくりくるものになかなか出会えない。悩んでいたところ、挿絵を手掛けてくださっているリョウさんから勧めて頂いたのが北方水滸伝でした。


【歴史小説と思いきや】

「好きな作品の傾向がよく重なるリョウさんのおススメならば!」とさっそくAmaz●nで全巻セットをポチりましたが、この時点ではちょっとした不安もありました。
 というのも、私自身、歴史小説を読んで長続きした試しがなかったのです。特に日本史・中国史系は学生時代から教科としてもあまり得意ではなく、「テスト前に暗記するだけして終わったら頭の中の単語を捨てる」という勉強の仕方をしていたもので、自分の血にも肉にもなっていない。
 そんな人間が19巻に及ぶ大作歴史小説なぞ果たして読めるのか。そんな不安を抱えながら到着した全巻セットの第1巻を手に取ってめくってみましたが、数ページ読んだところで抱いた感想は純粋な驚きでした。
 読みやすい。びっくりするほど読みやすい。難しい言葉がずらっと並んでいるのかと思いきや、想像とは正反対に文章はとてもシンプルで、けれども情景や登場人物の表情はするすると頭の中で浮かび上がってくる。歴史小説であることは間違いありませんが、ときどき少年漫画を読んでいるような気分にさえなるほど、北水は熱くハートフルなものでした。
 それは戦いが激化する後半になっても変わらず、短く簡単な言葉であればあるほど、ずしりとした重みがお腹のあたりに伸し掛かってくる。短い言葉の中に好漢たちの生き様が凝縮されていて、ものすごい力強さを持っている。1巻を読み終える頃には、すっかりその世界観と好漢たちに落とされていました。
 そんな具合で、2013年に購入して2015年に読み終えるまで、寄り道は結構してしまいましたが、無事に全巻を読み終えることができました。途中から登場人物の整理と幻水との関連性を見るためにエクセルで登場人物リストを作ったり、胸にきた描写のあるシーンに付箋を貼ったり、今まで読書をしていてやったこともないようなこともいくらかやりました。そのくらい、惹き込まれたのだと思います。
 後半10巻分くらいは約2か月の間で一気に読みましたが、英傑の死が重くて2・3日続きを読めなかったこともありました。
 元の目的であった戦争シーンも、シンプルながらわかりやすく、スピード感と勢いをびりびりと感じさせてくれ、大変勉強にもなりました。今後、戦争シーンが増えたら生暖かい目で見てやってください(笑)

 北水は北方先生が原典を一度崩して再構築した作品で、原典とはかなりかけ離れたストーリーになっています。が、多分、幻水好きはすんなり受け入れられるんじゃないかと思います。路線は違うとはいえ、幻水とてある意味再構築された水滸伝ですしね。
 発売からかなり経っていて、もうとっくの昔に読んだよ、という方も多いと思いますが、まだの方にはぜひお勧めしたい作品です。


【好きな好漢】

話の感想は下記の各巻感想で書くとして、好きな好漢を軽く羅列します。
敵味方問わず魅力的な登場人物ばかりだった…!

・公孫勝殿と林冲
ここはもうペアで好きです。ふたり揃えば必ず物騒な口げんかをかますのが微笑ましくて、出てくるたびに笑いが止まりませんでした。しかもふたりともべらぼうに強いのもあって、存在そのものにも安心感がある。中盤までの苦しい展開のときでも変わらずにけんかしている彼らは、それだけ強いという証でもあるんじゃないかとも思います。自分にとっての北水における清涼剤みたいなコンビです。
ちなみに、幻水で置き換えるとルックとユーバーなこのふたり。「あぁ…」となんだか納得。

・安道全先生
病人がいないと死んじゃう先生。序盤の、まだ世界観の全体像を読みながら作っている中ではかなりインパクトが強かったです。林冲・白勝との関係も大好き。医学のことばかり頭があるのかと思いきや、初めてできた友達という存在に戸惑ったり、友達のために涙する姿もあって、とても愛おしい先生です。個人的に、北水1・2を争う萌えキャラだと思います。

・秦明さん
秦明さんを筆頭とした二竜山メンバーが大好きです。終盤の戦いは涙なしには読めませんでした。秦明さんは梁山泊の将軍クラスのメンバーの中でも特に落ち着きと滲み出る人柄の温かさが強く感じられる人で、登場するとほっとする存在でした。結婚までの流れは本当にかわいい。息子さんは楊令伝でバリバリ活躍するのだろうか…!わくわくします。

・石秀
大好きです。彼を語るとネタバレを避けられないので多くを語れないのが辛いですが、北水を読んだ多くの方にとってもかなり胸に残るキャラなのではないでしょうか。「門を閉めろ」は何度読み返しても泣きます。涙腺クラッシャー石秀。

・宣賛
顔と心を挫かれた覆面キャラから一転して、アクティブ系現場の軍師(美人妻持ち)に大変身してビックリしました。考え方も柔軟で現場ともうまくやれるできる男。関勝殿との関係性もすごく好き。

・韓滔さんと彭キさん
格好良すぎるおっさんコンビ。幻水ではマクシミリアン主従の星の持ち主で、これもすごく納得。
北水のおっさん・じいさんはなぜこう揃いも揃って格好良いのか。北方先生のおかげでじいさんキャラに目覚めそうです。

・馬麟
常に帯びているどこか寂しげな雰囲気と、話の節目で吹いてくれる笛の音が印象的です。終盤で過去を語る彼と戦場での姿にはぐっときました。

・湯隆
THE・鍛冶職人。朴訥としているけどどこかかわいい。梁山泊の職人たちはみんな大好きです。

・顧大嫂
梁山泊は男だけじゃない!を体現している強い女性。色々と女性に辛い展開が多い話なので、登場するたびに心から応援していました。

・晁蓋
梁山泊の筆頭のひとり。彼は最初から最後まで自分の中の炎の英雄と重なって仕方ありませんでした。ヒーロー、という言葉がよく似合う。

・楊令
北水は梁山泊の話であり、楊令の成長記でもある。彼が好漢たちから色々なものを託されていくのも、初めは重い物をこんな小さい子に背負わせて、と思ってしまうんですが、次第に彼がそれだけのものを背負える器になっていっているのが感動でした。終盤は完全に主人公で、それも違和感がまったくない。彼の今後が楽しみです。



【各巻感想】

※注意事項※
・ここから下の感想にはネタバレの配慮は一切ありません。
 誰が死ぬかなどもあけっぴろげに書いておりますのでご注意ください。
・登場人物と幻水キャラ(特に3)を並べたり重ねたりして語っているところが多々あります。
・リアルタイムで感想を書き始めたのが4巻からなので、1〜3巻だけ全巻読後にまとめた感想になっています。


【1〜3巻】
 すべての始まりから梁山泊を手に入れるところまでですが、冒頭3巻は林冲と魯智深のインパクトがとにかく強烈でした。この感想を書くために全巻読んだ後に1〜3巻をパラ読みし直しましたが、本当に林冲は終始一貫して格好良い。心の弱さはあるけれど、戦闘時においての強さと格好良さはダントツだと思います。初めの頃は幻水キャラの同宿星と重ねて読む割合がかなり多かったんですが、林冲に関しては幻水の天雄星たちと重ねる必要がないほど、最初から林冲でした。
 そういう意味では魯智深も同じのはずなんですが、こちらはなぜか最初から最後まで脳内ビジュアルがビクトールでした。文中にさんざん坊主だって書いてるのに熊さんが離れないんです。なぜだ。
 好きなのは、やっぱり1巻後半の林冲・安道全・白勝の出会い〜脱獄のあたりでしょうか。まったく違うタイプの3人が強い絆で結ばれ、それが話の後半になっても変わらずにあり続けたのが本当に嬉しかったです。
 それから、まだこの頃は宋との戦いを夢物語のように語り合う宋江・晁蓋と同志たちが、全巻読み終えてから見てみるととても微笑ましい。それでも現実に向けて地道な動きをしてきたからこそ、あれだけ戦えたんだろうなあと思うと、また感慨深いものがあります。


【4巻】
※ここからはリアルタイムに読みながらの感想です。読んだ直後の興奮や叫びもそのまま残しているので読破された方じゃないと逆に伝わらないかもしれません(笑)

・馬桂の絶望と空虚さが淡々と描かれていて怖い。気持ちはわかるけど怖い。
・雷横とその部下たちのやり取りがかっこよくて…!ちと目が潤みました。
・白勝の気配りがあったかい。人としては当たり前の優しさだけど、安道全や湯隆みたいな職人相手だとすごく際立つ。安道全先生の「鍼か。待て。いや、おまえが来い」には噴いた。
・そんな安道全先生のすっ飛んだ言動にすっかり慣れ親しんでる林冲すげえええ。「俺が死んだ時は、腑分けでもなんでもしてくれ。屍体になっても歩いておまえのところまで戻ってくる」とかすごい冗談だなおい!!
・湯隆さんの朴訥とした感じが好きです。湯隆さんと友達になりたがる晁蓋さんも素敵。晁蓋さんは炎の英雄と重なるなあ。ビジュアルもなんとなく似た感じのイメージ。
・楊志と梁山泊メンバーの酒盛り……良い!すごく強いのに心にどこか迷いのあるあたり、やっぱりフリックと重ねてしまう。
・虎と戦う武松と李逵を緊張しながら見守る宋江かわいい。


【5巻】
・林冲かっこよすぎて鼻血吹く。
・林冲と公孫勝は仲が悪いんだかなんなんだか。肌が合わないと公孫勝は言うけれど、同族嫌悪的なものもあるのかなあ。
・死を厭わない戦いをサラリとしてのける童威と、それに羨ましさをにじませる公孫勝。終わった後、童威がなんでもない口調で公孫勝に声かけるのもまたいいね。
・黄文炳の最期も敵ながら格好良い。ひとり残って、ってさあ…!!!
・あの安道全先生が呆れるほどの魯智深の回復力と自分の腕を食う元気。こんなに気持ちよく人肉を食すシーンを読む日が来るとは思わなんだ。
・楊志の最期はもちろん良かったんだけど、残された石秀の最期が最高に強烈だった。なんだろう、楊志はこういう壮絶な死を遂げる大物感がにじみ出ていたけれど、石秀は致死軍を外されて苦しみ、迷い、もがいて、これから光を見出すんじゃないかという、まだ「途上」の印象があった。そんな彼が、決死の最期を見せたからこそ、こんなにも胸に残ったのかもしれない。石秀が楊令に致死軍時代の剣を与える流れも良いなあ。受け継いでいくというのが好きなので、後々活きてくるのかと思うと愉しみ。
・周通もしっかり成長して後を託したのちに死んでいくのがまた…やるせないけれど格好良い。


【6巻】
・5巻の激しさに反して、ちょっと箸休め的な印象。次の山場に向かって梁山泊も禁軍も水面下で互いを読み合い、策を張り巡らしていく様が面白い。
・新加入の秦明さんは肝の座った軍人の中の軍人という感じで、頭も良く、どことなく幻水2の同宿星であるキバ将軍を彷彿とさせる。晴れてようやく梁山泊入りできた花栄のうきうきっぷりはなんとなく同宿星のグレミオが出てくる。このふたりは軍人なのにどこか可愛いと思ってしまう。
・三山の防戦は前回の戦いに比べると静かだったけれど、見事なヒットアンドアウェイで気持ちいい。
・敵側でうおおっとなったのが新登場の聞煥章。頭切れまくり、腐った国の考え方をばっさり切って先を読む姿は梁山泊側で見るとものすごい脅威になりそう。外見のイメージがなぜかTKのグントラムさんと重なるのだけど、私はグントラムさんをこう見ているのだろうか。いや、違う。グントラムさんは誠実な人だ。


【7巻】
・雷横…雷横ーー!!!なんと格好良い散り際か…。戦死を美学とするわけではないけれど、できるものならレオにもこういう格好良い最期を飾って欲しいと思ってしまう。彼の最期を看取ったのが、立場的には一般人ともいえる陶宗旺だったというのもまた、感じさせるものがある。
・李富と聞煥章が仲良くなったのはちと意外だった。てっきり対立するものと。馬桂に溺れている李富を下に見ておきながら、あっさり扈三娘にひと目惚れしてるあたり、聞煥章も結構チョロイのだろうか。初登場時は油断も隙もあったもんじゃないインテリ敵役と思ったけど、そうでもないのかなあ。ふたりの祝家荘を利用した梁山泊攻めの策は、机上の計算では完璧で見事でも、そのおごりがありありと出ていて失敗フラグがビンビン。恐らく、敵も成長していく過程ということなんだろうな。
・阮小五はとにかくもったいない…こんなところで…。彼がここで斃れることが、大きな伏線かフラグであって欲しい。石秀の短刀が楊令に渡ったときのように。
・時遷はやばい…と思ったところを一度回避してほっとしてたら最後の最後に…!馬桂がああなった経緯は致し方ないところもあるのでどちらがどうとも言えないけど、本懐を遂げられなかったのは悔しいだろうなあ…。後釜になりそうな石勇が志を継いでくれるといいな。


【8巻】
・鄭天寿かっけええ!!ギリギリまで腰を上げない緊迫感のある攻防が素晴らしく格好良かった。夜〜夜明けにかけての時間の描写と兵の動きに痺れた。そして薬草発見からの流れですよ。おおおおい!!!(号泣)
・焦挺君もカッと出てきてパパパパッと死亡フラグを立ててササササッと見事に回収して逝ってしまった…。こんなことがあと10巻分待ち受けているのかと思うと、胃がきりきりしてきちゃうよ…。
・反面、大量の男たちの生き様、死に様を見せつけられる期待も大きい。それは、自分が書きたいものに近しいところもあるだろうから。書きたいテーマは違えど、人の生き様を書きたいのは同じなのかもしれない、と北水を読んでいると感じる。彼らの生き様から、たくさんのものを吸収させて貰おうと思う。


【9巻】
・林冲、これは乗り越え切れたと言えるのかなあ。いや、彼はずっと腹の中にこの後悔を抱えて生きていきそう。そんでもって百里風が仕草も含めてすごく可愛い。
・たまたまとか言いつつ林冲を助けた公孫勝殿のやり口が、徹底しすぎていて本気で笑った。
・反対に安道全先生のツンデレっぷりには悶えた。林冲周りはなんなのもう…!
・祝家荘の戦いが激しかったのもあってか、流花寨の新設だったり、今回は割と平和な情景が続くなあと思いきやの最後。ケ飛にはさほど思い入れがなかったけれど、柴進さんのあれはなあ…わざとなんだろか。フォローする燕青君に人間味を初めて感じたかもしれない。
・扈三娘はとってもリリィですね。


【10巻】
・梁山泊VS代州軍戦が熱い!ぶつかり合うまで散々両軍の駆け引きを見せられたものだから、手に汗握るわどっちも応援したいわですごかった。
・林冲VS呼延灼の一騎打ちが、ほんの数行なのに超かっこいいという…。難しい言葉は使っていないのに、この圧力。文章の力に圧倒されっぱなし。
・「小さな村の保正をやりながら、賊徒の真似事もした。あのころが、一番愉しかったような気がする」晁蓋さんのこのセリフが、まるまま炎の英雄に重なる。少年がそのまま大人になったような。そんなイメージです。
・相変わらず公孫勝殿と林冲のやり取りに笑が止まらない。1巻に1回は出てきてけんかしなきゃ気が済まんのか!八つ裂きにしたい友ってなにさ!(笑)
・呼延灼の葛藤と梁山泊の人々の接し方が印象的。晁蓋との対話はなぜか涙が出そうになった。穆弘・史進との会話も良かった。


【11巻】
・索超と楊令のやりとりが愛おしい。じゃれあっているだけなのに読んでて泣きそうになる。
・梁山泊入りする前の杜興と李応のやりとりが軽妙だっただけに、今回のふたりのやりとりが対象的に沈痛で重かった…。ずっと李家に仕えてきた杜興にとって、五十歳にしてその仕える場がなくなったことは解放ではなく喪失だったのだなあ…。だけど、投げやりにやった負傷兵の調練が、結果として兵たちを立ち直らせ、慕われるようになったのは、彼の人徳であり李家に仕えてきたことで得たものなのだろうと思う。「腰抜けが」の物言いや、遅れそうになる自分に苛立つのが、また泣ける。
・宋江と晁蓋が考えの違いが出たことにより人間味が増して、じれったさなり苛立ちを感じるようになった。今までがどこかふたりとも超然としていただけに、彼らも人間なんだなあと。(あ、宋江は女回りで色々あったときに人間味を感じましたが・笑)宋江と晁蓋のぶつかり合いが、呉用を挟むことで和らぐのはいいなと思った。最初のメンバーだし。だけど、歩み寄るのが遅かった…。


【12巻】
・えーーーんーーーせーーーいーーー!!!(涙)ちょっと皮肉っぽくて敵を作りやすい側近キャラだと思っていた今までを謝りたい。なんて健気なのだろう。慮俊義救出劇は本当にざわっとした。手に汗握る、というのとはちょっと違う感覚で、燕青はきっと死なないしやり遂げるだろうとは思っていたけれど、彼の心の叫び、慮俊義への想いが本当にじわじわと伝わって来て、切なかった。逃げる道中、土地と名前をわざと言い間違え、最後には言い間違えられなくなるまでの流れが切なくて切なくて…泣く。
・燕青の執念と勘に賭けてサポートした王英もいい味出してました。扈三娘が絡むとあれだけど、仕事人な王英はかっこいい。
・関勝との戦いは呼延灼目線で見ると「関勝なにするのおおお」とはらはらしたけど、関勝目線で見るとなんとときめくこと…!朱富の饅頭を食べた帰りのどっしりとした穏やかさ、惚れる!!
・戦後の朱富の店での語らいもすごく、すごくよかった。韓滔さんの死について、自分を責めつつも現れた林冲・史進によって少し和らぎ、だけど最後の最後に涙する呼延灼…!切ない!!
・雄州組も良いね!良いね!!関勝をてっぺんにして、大らかな、志の通じ合った感じがたまりません。


【13巻】
・自分の頭にない水上戦の術を語る宣賛にあまりいい気がしてなさそうな呉用。朱武と呉用の間に漂う空気も微妙な感じ。呉用と李俊の確執もだんだんくっきりと浮かび上がって来ましたね…。
・阮小二と趙林の師弟関係が微笑ましい。…だけに今後の展開が怖い。
・楊令と郭盛の離れていても互いを心配し合う絆にほっこり。郭盛の夢(楊令の部下となって戦う)は叶うのかなあ…。
・関勝・呼延灼・穆弘VS趙安戦が熱かった!多分、誰も死なないだろうという安心感もあったのかも趙安の関勝・呼延灼へのライバル心が少年漫画のようで胸ときめく。
・得体の知れない雰囲気を纏っていた慮俊義さんの心が見えて一気に親しみやすく…!
・双頭山がああああ!!!呉用は元々軍師には向いてないのに、代わる人がいなかったことと性格が災いして今の立場になり、責められるようになっちゃったんだろうなあ。阮小五が生きてたら違ってがのかもしれない。やるせない。
・朱仝さんの「俺の副官だな。まさしく、俺の副官だ」に涙腺決壊。李忠の突撃〜朱仝さんの戦いっぷり〜最期までの流れが凄まじくて、格好良い…!!
・彭キさんの戦死は超然としていて涙よりも行動のかっこよさにときめいた。そして韓滔さんのときと同じように朱富のお店で涙する呼延灼もまた…。
・李富と聞煥章の共謀していながらもお互いに考えることが違う感じ、聞煥章の裏を行く感じが怖い。
・兼ねてから名前だけ出てきては恐れられていた童貫が来た…!威圧感が半端ない。ものすごいラスボス感。
・孔明の造船所焼き討ち作戦、うまくいったけど…!一度立ち上がって合図を送る格好良さ。涙というよりもかっこよかった。逃げ遅れた8人の兵を慰める童猛も切ないけれど格好良かった。


【14巻】
・14巻開始時点で108星で23人死んでいる…。約5分の1…。ゴクリ。
・鮑旭の「責任はすべて私が取ります」は、言葉としてはとても簡単だけど北水だと重みが違う。鮑旭ちゃんこんなに立派になって…。
・宋江殿、キューピッドになろうとするの巻。
・史進の素っ裸で大暴れ事件の流れが面白くてしゃあない。王進道場に2回も入っておきながらこのあほっぷり。顔がほころんだままのお偉いさん方が怖すぎる(笑)上級将校たちだけじゃなく部下にまで「ぷーくすくすww」と見られてる史進と、その横でハラハラしっぱなし鄒淵がかわいい!
・樊瑞の「死と命について」は、やはり自分の死を持って実感することになるのか。安道全先生との淡々とした言葉のやり取りが深い。哲学。
・ぽっと出てきた燕順がさくっと自分の散り際を決めて清風山に行ってしまった。かっこよすぎる…!!見送る解珍さんも泣ける。そして燕順の死に際かっこええええええ!!!
・花栄さんの弓の腕前がようやくお披露目!これはなんと少年漫画的な…!朱武さんは軍師だけど、呉用・宣賛より実践的というか、堅苦しくない感じが良い。そういうところが、生真面目な花栄さんと返って合っているんだろうなー。


【15巻】
・魏定国に単独任務が下ったよー!14巻の最後が地猛の章だったから任務達成した後にそのまま死ぬんじゃないかとドキドキしたよ…!北水のちきちもにまで感じるこの謎の身内感はなんなのだろう。
・宋清は結局最後まで最初のもやもやを捨てきれなかったんだな…。でも、兵糧守り抜いた意地はすごい。
・でもって楽和ーーー!!!(涙)馬麟とのセッションがただただ美しくて悲しい…。きれいな最期でした。
・穆弘、え、ここ!?ここで死ぬの!?!?早いよ、兄さん早いよ!!!
・欧鵬も逝ってしもた…。今回は死ぬ人多すぎて心が追いつかない…!花栄の弓は他の英傑で使い手がいなかったこともあり、際立ってかっこよく見えた。これは惚れる。
・黄信と単廷珪の戦いたいのに怪我で戦えないもどかしさがやるせない。と思ったら黄信TUEEEEE!!!しかも死ぬ間際のなんとやらじゃなくて、完全に復活しやがった…!サイヤ人か。
・李俊の「何がどうとは説明できないが」「喧嘩でいまこいつに一発食らわせればというのがあるだろう」というアバウトな説明がもうwww(ちゃんとした感想文にしようと思ったけど、ここだけは敢えて草を生やそう)そら呉用殿と合わんわw
・項充が飛刀を隠し持ってた!戦い方がかっこいい!!水軍いいな!
・扈三娘の結婚に対する考え方のぶっとびっぷりには宋江殿もとほほ。そしていつ別れるか賭けをする梁山泊の連中のノリが好きだ。
・p338の李雲のモノローグが素敵。職人組かわいい。
・やさぐれ単廷珪、林冲に目覚めさせられた…!そして史進の「酒一杯分の借りのために生きることにした〜」ってくだりを読んだ後、ふたりの宿星を幻水に変換して悶えた。天微と地奇。言いたいことはお分かりになりますね。すみません、ばかです。
・張平と楊令がかわいすぎる。これは楊令伝に繋がっていくのかな。


【16巻】
・忙しくて大変な柴進さん。それにしても呉用殿は嫌われてるなあ。
・童貫元帥のラスボス感が巻を追うごとに増していく。怖いけれど格好いい。
・しかし、ここまできても林冲と公孫勝殿は本当にぶれないなww
・カク思文とカク瑾の親子のやり取りに涙腺ぶわっ。
・ケ飛が死んだときの柴進さんの言葉が、本人の言葉によって返って来たなあ、という感じがした。自覚あったんですね…。
・史文恭と劉唐のやりとりの乾いた空気と、夕陽の情景描写がぐっとくる。最期の一文は特に良かった。
・聞煥章の扈三娘への執念がやばい…なんだよお前処女厨かよ…。
・梁山泊から出て行こうとする孫二娘を引き止める顧大嫂の言葉にうるっとしたのにその後の宴会で引っ込んだ。李俊逃げるなこらww阮小七と李立がひたすら不憫。


【17巻】
・双頭山VS童貫軍、いよいよって感じですが童貫軍のオーラが怖い怖い。
・董平はあっさりいってしまったなあ…。なんとなくキャラの印象もふわっとしたままだったかも。
・高キュウに対峙する解珍さんが超かっけええ!!!堂々と、そして食えない親父感!!
・候健さんも味のある…。敵にも味方にも疑われ、自分も迷いの中にいて、逃げる機を逃して憐れなラスト…と思いきや痛快に高キュウのことを罵ってくれてすかっとした!
・慮俊義の最後の演説と、その鼓動を聞きながら父を見送る燕青…!泣きました。
・単廷珪、あっさり逝きすぎだろ…!!死域に入ったんじゃなかったの…!?史進から借りた酒一杯分の借りはどうするのよ…!その後の関勝殿の言葉もかっこいいから薄さが尚のこと…。
・魏定国・呂方・郭盛の流花寨の束の間ののほほんとしたひと時が良い。郭盛を棒で突く魏定国がかわいいなあ。北水は地猛の方が落ち着きがあるのかねー。
・致死軍VS高廉の軍の全面戦争は致死軍・飛竜軍のメンバーの視点が動きながら展開されていくのが面白かった。劉唐が初めて史文恭と会った時に彼の正体を暴けなかったことを悔いている描写にぐっときた。
・更に、常に冷徹に、目的のためにと非情を貫いているようだった公孫勝が仲間の死を無駄にしないためにもここで高廉とケリをつけようという気持ちがなんとも…!!しかも、永い付き合いの劉唐に庇われながらっていうのがね…!ああああ…。更には今までさんざん口げんかしてた林冲に過去を吐露しちゃって、林冲に気を遣わせちゃうとかもおね…。今までの口げんかが積もったうえでのこの関係というのが…たまらん。
・呂牛は自業自得で、珍しく「ざまぁ」とも思ってしまった。燕青の復讐の拷問もちょっとすかっとしてしまったよ。
・魯達の死に方が凄まじい…!!!てっきり楊令に全部語った後真っ白になって死ぬのかと思ったら…!壮絶すぎるわ!!
・締めの魯達の死を呉用・宣賛に伝える宋江のシーンが印象的で、初めて「宋江殿かっこいい」と思ったかもしれない。


【18巻】
・李俊と呉用の不仲さ…というか李俊が呉用嫌いすぎて笑えなくなってきた。
・楊令と郭盛の再会がとても澄み渡ったきれいさで、ぴゅあっぴゅあしてしまった。良かったね郭盛!
・楊令が楊志の札を赤から黒に返すシーンにぐっときた。父の志を継ぐという意志の示し方としてこれ以上のものはないですな!
・皇甫端と林冲と百里風の馬トークも静謐でとても澄んだ気持ちで読めた。最終決戦前にして、今回は心洗われる巻なのか…。
・もはや宋VS梁山泊というより童貫軍VS梁山泊という具合で、どっちも応援してしまう。
・秦明・解珍・カク思文の晩酌シーンがじんわりきて切ないよう…。終盤に相応しく荒々しい死にざまばかり見せられるのかと思いきや、嵐の前の静けさで切ないシーンの多いこと…;;
・蛇!?え、蛇!?
・解珍さんの死に際かっこいい!!!!カク思文、秦明の居残り組の最後も、もっと壮絶なものかと思いきや悲壮感いっぱいで…。二竜山メンバーが大好きなんだ、とここで実感しました。
・唐昇を巻き込んだ3度目の北京大名府占領策は痛快でした!まさか唐昇が裏切るとは思わなんだ。
・P329〜330の「林冲」「はい」のやりとりに腹抱えて笑ってしまった。宋江殿にだけ素直な林冲。
・鄒潤・楊令・カク瑾のやりとりもほっこりしたけどフラグだろうこれと思ったら切ない。
・扈三娘の嘲りが今に来て返って来るなんてなあああ。そう考えると、扈三娘はあちこちに爆弾仕掛けまくってるような…。
・林冲の最後はとにかく清廉としていた。格好いいともきれいとも違う、もっと澄んだ美しさがあった。涙を流すより、見とれた。むしろ涙は一緒に残った郁保四のシーンで流れました…。
・で。酔っ払っていたとはいえ、劉唐が死んだ時ですら泣かなかった公孫勝殿が、林冲の死で泣くと…!とんだツンデレ!!(号泣)


【19巻】
・李俊と呉用のもやもやがちょっとだけ晴れた。お互いに顔を合わせちゃダメなんだろうね、彼らは。
・林冲を引き継いだ楊令が旗を「林」のままにするのが、ベタだけどすごくうれしい。
・俺が死んだら嫁さんに……って張清それ死亡フラグ!?(どうやら回避した模様)
・呉用殿は実際にそこにいたら面倒くさいだろうなあっていうのはすごくわかる。しかし不憫だなとも思う。でも呼延灼のしたりな気持ちもわかる。難しい人間ドラマ。
・呉用殿は自分の性格をわかっていながら抑えられないのが弱点かな。そのツケが回ってきたことでのこの結果なのかもしれない。
・楊令と史進の兄弟っぽい感じが可愛い。林冲にかわいがられた史進が、楊令に同じ情を向けているのがたまらない。
・陳達さんはいつも前線にいて危ない危ないと思っていたけどここできたか…!てか、病わずらってたなんて…!見せ場もあって格好良かった。レオ殿にも(以下略)
・花栄は原典に近くもっと宋江ラブな感じで死ぬと思ってたけどすんげー壮絶だった…!魏定国もかっこよかったし。しっかし趙安しぶといな。仕留められなかったかー。
・杜興の爺さんの口の悪さがここで生きるとは。呉用のことをちゃんと呼延灼に話してくれて良かった。
・凌振がマッドサイエンティストならぬマッド大砲職人化しててこえええ。
・索超、あと10ページちょいじゃないかよ頑張ってよ…。涙。
・安道全せんせぇ……!!(号泣)
・最後の宋江と楊令のシーンは、ここに至るべくして至った、という感じがして、口許を引き締めながら読んでしまった。楊令はどれだけの人の志を、命を背負って生きなくてはならないのか。けれど、そこで潰れない彼の強さが、楊令伝で描かれているんだろうなあ。読みたい。けれどまた年単位になりそうだから、長編が終わってからのご褒美にしようかなとも思う。